やまひら醤油

「これが本当のお醤油の味なのね!」と羽田美智子が感動した、香川県・小豆島で114年続く老舗の「やまひら醤油」のお醤油。余計なものを一切いれず、大豆・小麦・塩のみを使い、創業当時からの杉桶を使用した丁寧な醤油作りを続けています。4代目の山口和久さんに、”天然の味”の秘訣を伺いました。

大豆と小麦と塩のみを使用!創業当時からの杉桶を使用し、ゆっくりと育てられている”天然のお醤油”。

羽田 わぁ~!蔵の中、木にお醤油の匂いが染み付いて、すごく良い香りがします。

山口 うちは114年続く醤油屋なんですけど、この蔵も、諸味を熟成させる木桶も、全て創業当時からのものを使用しているんですよ。

羽田 114年!そんなに長い歴史があるんですね。

山口 この空間自体に、麹菌や乳酸菌、酵母菌が棲み着いているんです。蔵によって棲み着いている酵母が違うので、ここでしか作れない醤油の味になる。

やまひら醤油
やまひら醤油

羽田 蔵に棲み着いている菌が、お醤油を美味しくしてくれているんですね。

山口 114年の歴史の中で、良い酵母が残っているんですよ。醤油の原材料は、大豆と小麦と塩だけ。添加物は一切使用していません。

羽田 それだけですか!?とってもシンプルなんですね!

山口 色々な材料を使っていた時期もあったんですけど、いらないものをどんどん削ぎ落としていったんです。

羽田 本当に必要なものだけが残ったんですね。作り方は昔から変えていないんですか?

山口 昔からのやり方を、今も続けていますね。だいたい1年から1年半、この杉桶で諸味を発酵・熟成させています。

羽田 そんなに時間をかけるんですね!桶によって諸味の色が違うのは、仕込んだ時期が違うんですか?

山口 そうですね。色が濃い方が、古くに仕込んだものです。櫂棒(かいぼう)という諸味をかき混ぜる棒で、毎日撹拌してあげるんですよ。

羽田 持たせていただいてもいいですか?(櫂棒を持って)わぁ、重い!!これじゃ、まるでスクワット!スポーツジムに行く必要がないですね(笑)

山口 そうですね(笑)。毎日の作業なので大変ですが、こういった日々の管理がとても大切なんです。

羽田 この手作業が、お醤油を美味しくする秘訣なんですね。

やまひら醤油

山口 そうですね。あとは、この木桶が気温や湿度の急激な変化から守ってくれるので、自然に任せた温度調節が可能なんです。

羽田 木が自然に管理して、蔵全体で、ゆっくり育てていらっしゃるんですね。こういった昔ながらのやり方をされているお醤油屋さんって、他にもあるんですか?

山口 もうほとんどないですね。「温醸(おんじょう)」といって、FRP(グラスファイバー)やステンレスのプラスチックの桶に入れたものを人工的に管理して、短い期間で醸造しているところが多いんですよ。そっちの方が大量生産できますしね。

羽田 やっぱり、いいものは沢山できないんですね。お醤油1滴1滴を、無駄にできなくなります!

やまひら醤油

昔からのお客様の言葉が、何よりのアドバイス。目指すのは、「あまり主張せずに、存在感がある味」。

羽田 番組の収録で伺ったのが出会いでしたね。やまひらさんのお醤油を口にした時に、何のひっかかりもなく、すーっと抜けていく感じが不思議で。「あれ!?お醤油ってこういう味だったっけ!?」ってちょっとびっくりしたんです。

山口 そうだったんですね。

羽田 その後に「庄分酢」さんの蔵を尋ねたりして、発酵や熟成とはどういうことかを自分なりに学んでようやく、やまひらさんのお醤油には余計なものが一切入っていなくて、自然に寄り添った作り方をしているから、クセがなくてまろやかなんだってことが分かったんです。

山口 ありがとうございます。そこに気がついていただけたのは、嬉しいですね。

羽田 ”天然の味”って、すごいんですね。私自身、自然なものを嗜好している割に、実は自然なものから遠ざかっていたっていうことに気がついたんです。それで自分が今まで口にしてきたものの成分表を見たら、色んなものが入っていて。そういうものに慣れてしまっていたんでしょうね。

山口 あまり主張せずに存在感がある味、素材を活かした味っていうのを、目指して作っています。

羽田 まさにそのお言葉通りの味ですよね。桜で例えると、静かに咲いている山桜みたいです。ひっそりとしていながら、存在感は別格で。それって役者としても、大事なことだと思っています。

山口 山桜ですか!そうであったら、嬉しいですね。

羽田 天然のお醤油ってこういうものなんだっていうことを、皆さんに知ってもらいたいです。

やまひら醤油

羽田 前回ロケで伺ったときに、離島に住んでいらっしゃる方が「やまひらさんのお醤油でお魚を炊くと、とっても美味しいんだよ」って教えてくださいました。古くからのお客様も多いんですね。

山口 そうですね。離島には父と私で配達に行っているんですけど、長い付き合いのお客様からは、お醤油を使ったレシピとか感想とか色々なことを教えていただくんですよ。「今年は辛かったよ」とか、ストレートなご意見をいただくこともあります。

羽田 自然な作り方だから、毎年味が変わるものなんですか?

山口 普通のお客様は気が付かないと思うんですけど、やっぱり細かい変化はありますね。ずっと使って頂いているお客様だからこそ、微妙な違いにも気がついてくださるんです。

羽田 昔からのお客様の言葉が、一番厳しくも愛があるんですね。

山口 お叱りを受けることもしょっちゅうありますが(笑)。とてもありがたい、なによりのアドバイスだと思っています。

やまひら醤油

羽田 家業を守るって大変ですよね。114年も続いていると、背負うものも大きいんじゃないですか?

山口 以前までは気負っていた部分もありますけど、今は「私の代で終わってもいい」というくらいの気持ちでやっています。先月も、100年近く続けたお醤油屋さんが辞められたので、機械と貴重なレシピを譲り受けたんです。うちが創業した当時は、小豆島に400軒くらいのお醤油屋さんがあったんですけど、今は20軒弱になってしまって。以前までは気負っていた部分もありましたが、今は「お得意様を第一に考えて、もし必要とされなくなったら私の代で終わってもいい」という気持ちでやっています。

羽田 そんなに減ってしまったんですね。その中でも昔ながらのやり方を続けていらっしゃる山口さんにとって、お醤油とはどんな存在ですか?

山口 そうですね…子供みたいなものですね。手間がかかるけど、それだけ手間のかけがいがあるというか。

羽田 コツコツと昔ながらの製法を守り続けていらっしゃる作り手の方は、皆さんそうおっしゃいますね。子供を育てるように大変だけど、愛しい存在だって。

やまひら醤油
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キリッとしているけど、どこかまろやか。主役を引き立てる、名脇役の存在感!

山口 「国産丸大豆醤油」は国産の素材にこだわって作っています。ストレートな味なので、お刺し身や煮物に使うのがオススメです。

羽田 お刺身の味を引き立てて、支えてくれますよね。シンプルに、正直に、勝負している感じ。キリッとしているけど、どこかまろやかだから角がないんですよね。わさび醤油にして、ステーキとかにも合いそうです!

山口 お肉にも合いますよ。「だししょうゆ」は、煮炊きや照り焼き、筑前煮、おでんと何にでも使えます。

羽田 とっても柔らかい味ですよね、最高に美味しいです!これだけで、お料理が上手になれる気がします。出汁が効いているけど、お醤油の味もしっかりとあって。しょっぱすぎず、甘すぎず、すべてが控えめなんだけど、しっかりと仕事をされている。

山口 うちの子供も大好物な照り焼きは、鶏肉に片栗粉をまぶして焼いて、【だし醤油+水+砂糖】のタレをからめるだけ。あとは卵に混ぜて焼けば、簡単にだし巻き卵を作ることができますよ。

羽田 さっそく作ってみます!時間が短縮できて、助かります。「柚子ぽんず」は、すごく柚子の香りが清々しくて、スカッとしていますね。

山口 高知県産の柚子をたっぷり絞って作っています。冬は湯豆腐とか水炊き、夏は焼肉につけると、さっぱりして美味しいです。

羽田 サラダにも合いますよね。大根のサラダとか、玉ねぎのスライスにもピッタリ!

山口 そのままでも良いですけど、、ごま油やオリーブオイルをお好みで足すと、立派なドレッシングに変身するんです。

羽田 やまひらさんのお醤油は、主役を生かす、名脇役のような存在だと思います。すごいお仕事ですね。勉強させていただきました。ありがとうございます。

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